中国語の発音と声調

発音が大切です

どの国の言葉でもそうですが、発音というのはとても大切で、発音が悪ければ、意味が通じないばかりか、違う意味に取られたりする事は良くあることです。日本語でも東北の人と、鹿児島の人が話をすると、通じなかったり、誤解が生じたりするかも知れません。言葉は生き物ですから、自然とその差は大きくなるかも知れません。そうした乖離を防ぐ為に、ある地方で話されている言葉を標準として定めて、大きな変化が生じないようにするわけですが、ひとたび標準が定められると、それ以外のものは訛り、或いは方言として位置づけられます。

中国語の場合は北京の近く、つまり東北地方で話されていた言葉が、標準語として定められました。それで中国語のことを北京語というわけです。それで、正しい発音は東北地方の人に依って話されている中国語と言うことになります。中国の国土は膨大ですから、それぞれの地方で話されている中国語は、それはもう我々日本人の考える訛りや方言などというものを遙かに超えて、別の言葉ではないかと言うほどの変化があります。その為にも標準中国語が必要になり、それが先ほど触れた中国語ですが、東北地方以外の人々は、自分の地域の言葉と、標準語である北京語を話しているのです。普段は地域語であるその土地の言葉を話し、学校とか公式の場では共通語が話されています。

例えば香港の人たちの広東語と上海の人の上海語、福建省の福建語は全く発音が違い、その土地の人でなければ理解できません。彼らは共通語である北京語を勉強しているので、北京語を使えば意思の疎通ができるのです。しかし、それでも普段話している言葉が、共通語である北京語にも影響を与えるのは間違いのないことです。良く台湾訛りという言い方を聞きませんか? 台湾人の母語である台湾語(福建語の変化したもの)が舌を巻いて出す音がないために、台湾人の北京語も舌を巻かない傾向が出てしまうのはその例です。 しかし、アナウンサーとか語学学校の先生は正しい発音の出来る方ばかりですから、台湾で中国語を学ぶ者にとっては問題となりません。

阿甘語言の教師たちも、この面で訓練を受けていますので、正しい中国語を話すことができます。 とは言え、一般の台湾人は舌をあまり巻かないで発音するので、我是は「ゥオシィ」ではなく「ゥオスー」と聞こえます。これがいわゆる台湾訛りで、発音のこの違いに注意が集まりますが、実はこうした音の違いはさほど重要ではありません。何故その様に言うことができるのでしょうか。次の発音より声調がもっと大切という記事で説明しています。

発音は大切ですが声調はもっと大切です

中国語で「44」という数字を台湾の人が発音すると、少しでも大陸の発音を学んだ人なら、「スーシースー」ではなくて、「スースースー」と聞こえます。でも台湾人同士では通じています。つまり「44」と互いに認識されています。なぜなら重要なのは四声、二声とかの声調で、最初の「スー」が四声で次の「スー」が二声で最後のスーが四声になっているからです。

日本語は少しぐらいアクセントの置き場所を間違えた位では、ちょっとおかしいなと感じる位で、意味が通じなくなると言うことはありませんが、中国語では声調を間違えると、決して相手に通じないのです。すかさず、「ティンプトン」という反応が返ってきます。これはあなたの言っていることが分かりませんと言う意味で、日本語で「ちんぷんかんぷん」というのは、中国語の「ティンプトン(聞いて分からない)カンプトン(見て分からない)」という言葉から来ています。随分失礼な話ですが、中国語の性質が関係していて、本当に理解できないのです。言い換えると、 中国語は声調と言葉の意味が密接に関係していますから、声調を間違えると殆ど意味が通じません。これは声調とは単なるアクセントに過ぎない我々日本人には、理解しがたいほど厳格に区別されているのです。一声に発音されるべき言葉を二声に発音したとしても理解されるであろうと考えるのは大きな間違いであると言うことです。

では、この声調をどうしたら正確に発音できるのか、ということですが、辞書を調べ、正しい発音を聞きながら発声し、また笑われ、ほめられることを通して学ぶより他にはありません。 あの膨大な中国語の読み方だけではなく声調を共にセットとして覚えなければならないと言うことです。中国語が世界で最も難しい言語であると言われる由縁です。 しかし我々日本人が中国語を学ぶのは、アメリカ人が中国語を学ぶより遙かに楽であることは間違いありません。実際英語を学ぶよりも簡単に中国語をものにすることが出来るのです。英語は中学、高校、又大学で学んでもなかなか話せませんが、中国語は2年もすればかなり話せますよ。当校の教師によるスカイプを利用した授業も展開中です。

発音に関しては台湾の中国語はかなり良いのです

というのは台湾で用いられている発音記号は、その音を正確に表現できるのですが、中国で用いているのはローマピンインです。ローマ字さえ分かればそれを声に出して読むことが出来ます。その簡便さが仇になってしまうのです。つまりそれは発音記号なのに、多くの人がそのことを忘れて、ローマ字であると勘違いして、ローマ字の発音をしてしまうからです。そして発音は学習の最初の段階で学ぶために、ここでの間違いは決定的な習慣となって、以後修正が効かないほど頑固な癖になってしまうからです。

例えば中国語には濁音がなくて,有気音と無気音なのですが、ローマピンインは無気音を「b、d、g、j、z」で表しますから、「ばびぶべぼ、だぢづでど、がぎぐげご、じゃじじゅじぇじょ、ざじずぜぞ・・・」という濁音になってしまうのです。濁音でなくて無気音なのですが、日本人の発音は「がぎぐげご、ざじずぜぞ」の濁音なのです。中国語は音が綺麗なのですが、それを濁音で表現しているのはあんまりというものです。

例を挙げると「張さん」は無気音で舌先を上あごに付けて「チャンさん」と発音しますが、ローマピンインによる表記が「zhang」のために「ザンさん(ジャンさん)」になるのです。以下日本人が陥りやすいローマピンインの罠について書きましょう。

ローマピンインは3重母音を正しく発音できないようにしてあります

台湾式の注音記号なら3重母音も正確に発音するように助けるのですが、ローマピンインはそれを省略しています。もちろん最初から正確に覚えれば何でもないことなのですが、ローマ字に影響されて正確に覚えることが阻まれてしまうのです。

例を挙げると「diu」は「ディオウ」と発音されるべきなのですが、日本人はローマ字の影響を受けて「ディウ」なのです。酒だって「チォウ」なのですが、「ジウ」と濁音で発音されてしまいます。同じように「miu」は「ミォウ」であり、牛は「ニウ」でなくて「ニォウ」なのです。球は「qiu」と書くので「チウ」と発音してしまいますが、「チォウ」であり、留学は「リォウシエ」です。「リウシュエ」ではありません。「xiu」も同じです。また「対」は「dui」と書きますが、読む時は「ドェイ」と三重母音になるべきですが、「ドィ」と発音されてしまいます。「gui」しかり、「gui」で思い出しましたが、あなたのお名前はなんと言いますか?と言う時に「ニン・クェイ・シン」となる訳ですが、これは最初に学ぶ中国語で、日本人はここで、「ニン・グイ・シン」と徹底的に覚えてしまうので、その後、何年も中国語を学んで、文法などにも精通しても、その濁音とローマ字式発音からは逃れられなくなってしまいます。「hui」しかり、「kui、rui、sui、tui、zui」などは全てエと言う音が入るべきなのに、ローマ字読みされているのです。その他にも村、困、孫、尊などの音はそれぞれの子音に「un」がつきますが、「ツン、クン、スン、ツン」ではなく「ツェン、クェン、スェン、ツェン」と三重母音で発音されるべきなのです。

その他にも特定の子音に「u」と言う母音がつくと、たやすくローマ字読みの罠に陥ってしまうようです

それは子音の「j、n、l、q、x、y」に母音の「u」がつくと、日本人は必ずローマ字読みしてしまいます。「ju」は「ジュ」、「qu」は「チュ」、「xu」は「シュ」、「yu」は「ユ」です。しかし「nu」を除いて、これらの母音は”ウムラート”で、これは日本語で「ウ」を発音する時の口で「イ」と発音する音で、「ユ」と「イ」の融合した音と言えるもので、単純に「ジュ」や「ヌ、チュ、シュ、ユ」ではないのです。奴隷の場合は「ヌリー」ですが、女人は「ニーレン」となります。この唇の形は口を突き出して、タコとかヒョットコのまねをする時に口をとがらせますが、その口で「イ」と発音した時に出る音です。唇は日本語の「う」を発音する時の形ですが、その形で「イ」と発音するので、「ウ」ではなく「イ」と言う音が聞こえてくるべきなのに、「ウ」しか発音されていないのです。それでもたいていの人は経験により「女人」は「ニーレン」であって、「ヌーレン」ではないことを覚えますが、それを他の言葉には応用できないようです。「下雨」は「シァユー」ではなく「シァイー」なんです。(もちろん「シァユィ」と発音できているならかまいませんが・・・) 同様に「去」は「チュ」ーではなく「チュイー」もしくは「チー」なんですね。あぁホントに中国語は難しいですね!

台湾式の発音記号ならばその様な問題は起きないのです

台湾式の注音記号ならこれらが正しく表記されるので、正確に発音できるのです。「我」というのは最初に学ぶ発音かも知れませんが、「wo」は「オー」ではなく、台湾式の発音記号に則して発音するならば「ゥオ」となります。口を突き出して「ウ」と発音してから「オ」を発音するからです。台湾の注音記号から学べば「an」と「ang」も区別できますし、「en」と「eng」も使い分けられます。
「尤」も「eng」は大陸と台湾では随分と異なる発音になっていますが・・・。

また、中国式の発音では特に声調で、軽声が多く使われますが、台湾では元々の音が保たれています。言語は変化するものですから、元々のが保たれているからどうだというわけではありませんが、どうです?台湾の発音もなかなかしっかりとしたものでしょ?

台湾の注音記号はその音を正確に表現できるという利点を持っていますが、世界標準には成れませんでした

なぜなら、中国政府が採用したローマピンインは、上で述べたような問題を抱えていますが、英語のアルファベットを使ったという点で画期的なものでした。世界中の人たちが容易に中国語を学ぶ道を開いたからです。アルファベットならパソコンとも相性が良いのです。今や台湾人が歯ぎしりをして悔しがっても、発音記号としてローマピンインには敵わないでしょう。そして、ローマピンインの欠点は、それが発音記号であると言うことをしっかり抑えておけばその問題は解決されてしまうものです。阿甘語言中文科は台湾にある学校ですが、ローマピンインを採用している理由はここにあります。

台湾の中国語と大陸の中国語の発音の違い

中国大陸では軽声が多く、台湾は元々の声調が保たれています。例えば成人した男の人に先生という敬称を付けますが、大陸では生が軽声になるのに対して、台湾では一声が保たれています。更に台湾では「eng」の発音がしばしば「エン」と発音されます。この場合であれば「シエンシェン」とどちらも一声ですが、大陸では「シエンション」と発音され、一声と軽声になりますから、全く違うように聞こえます。認識も中国では四声と軽声になるのに対して、台湾では四声四声です。「識」は台湾では四声になります。このように両国では声調も異なるものが幾つかあります。

大陸では「月曜、火曜」の事を「星期一、星期二」と言いますが、台湾では「禮拜」を使います。大陸では「星期」を一声一声で発音しますが、台湾では一声二声になります。「研究」は大陸では二声一声ですが、台湾では二声四声です。この「禮拜」と「星期」のように、大陸で使う言葉と台湾では同じ漢字でも発音が違うものがあったり、さらには言い方自体が異なる場合もあるんです。夕方になると大陸では「晩上好」と言いますが、台湾でこのように言うと怪訝な顔をされます。こちらでは「晩安」と言うからです。

こういうのを挙げていったら沢山あるのですが、台湾の政権を親中国の政党が担当するようになったためと思われますが、こうした違いを大陸に合わせてなくして行く事が決定されました。学校やメディアから順次大陸式の発音に変えて行くようになるのだと思いますが、一度染みついてしまったものを直すのにはかなり時間がかかり、また、その過程で幾つかの問題も生じるものと思われます。とは言え、中国語の学習者にとっては差がなくなるというのは嬉しい事ですね。

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